(テックゲノッセ No.45,p.2,2006,栃木県試験研究機関連絡協議会)
 
 
「ノウハウ情報」  巨木の引っ越し技術:立曳き工法
 
 栗山村の湯西川に県の名木百選にも選ばれているネズコの巨木がありますが、湯西川ダム建設の関係で、70mほどの移動をしました。国土交通省湯西川ダム建設事務所が実施者ですが、林業センターは技術的な助言者として参加しました。
 このネズコは樹齢600年と言われ、目通り幹周6.5m、樹高25mという巨木(写真−1)で、これだけの巨木の移植は、前例がないものと思われます。さらに、ネズコは移植が難しい樹種とされています。
 通常大木の移植は、根回しをして細根を発生させた後に行いますが、ダム工事や地権者の関係でその期間が確保できないため、技術的に可能な限り大きな根鉢(縦横13×11m、深さ2m)を造り、立曳き工法(建築物の建曳き工法と同様、立木状態のままコロで移動する:写真−2)を採用することとしました。また、事前に根系の調査や移植先も含めた土壌調査等を行った結果、根株や幹芯の腐朽もあり、土壌・根張りも浅い(氾濫原上の立地)ことからも、それ以外の方法では移植は不可能と判断されました。
 実際の移植は、平成14年10月〜15年3月に実施され、台車の重量は大型H鋼も含めて700トン近いとのことでした。立曳きは12月下旬から1月中旬になったため、根鉢土壌の水分調整や防寒・凍結防止、蒸散抑制剤散布、強風対策(ワイヤーロープ固定)など細心の注意を払いました。移植先下層に砂利層を設け、根鉢周囲の土壌改良、根鉢斜面下部に浸透ますを設置、落雷対策として避雷針の設置、樹冠の寒冷紗養生と幹巻きをし、丸太やぐらとワイヤーロープで支柱工を行い、乾燥時に備えて灌水用水道も設置しました。
 なお、万一に備えて挿し木によるクローン苗の育成(林業センターが担当)も行い、移植後の管理のため、日本森林技術協会(委託)でモニタリング調査も実施しています。
 林業センター(tel.028-669-2211)
 

 
写真−1 人が小さく見えます
 

 
写真−2 移動中です

 

 注:原本の写真もカラー印刷です。

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