(樹木医学会第4回大会講演要旨集 p.18,1999,樹木医学会)

  日光杉並木樹勢回復事業における新たな工法の検討
 
野澤彰夫(栃木県林セ)・佐藤基明(栃木県造林課)
 
はじめに:日光杉並木は,生育環境の悪化等によリ本数が年々減少しておリ,樹勢の衰退も進行している。道路敷確保のため掘リ下げられて,根系生息域が犠牲になっている杉並木内において,道路機能を満たしつつ,根の張る領域を最大限に確保するため,新たな樹勢回復事業を実施することとなリ,実際に事業で適用するための工法について検討した。
新たな工法の検討:根系生息域の拡大と道路機能を両立させる方法として,例えば,道路を橋梁構造にして,道路下に根の張る領域を確保し,道路機能との両立を図る方法がある。しかし,PC杭工法による橋梁の施工は,杭打機を含めた作業ヤードの確保が困難であリ,単価も高<,施工性と経済性の両面から実施が困難である。
  そこで種々検討した結果,路床の支持体として中空ブロック既製品(商品名:ポカラ)を利用することによリ,施工性・経済性が改善され,支持強度・根系生息域の確保とも十分な性能が得られた。このブロックは,一辺が1.2mの立方体のコンクリートを,三方から直径95cmの円柱でくリ抜いた形状をしている。樹勢回復のためには,吸収根の生息域として深さ約1m程度確保されればほぽ十分と考えられる。この上をコンクリート有孔床版と砕石簡易舗装とし,中空ブロックの中とその周囲は,表−1に示す改良土壌を充填した。
  また,本工法の施工によリ,切土された部分を盛土・復元し,昔の道形に近づけられるため,街道景観の復元の観点からも,望ましい工法であると考えられる。
日光杉並木への施工:中空ブロックエ法による樹勢回復事業は,平成10〜12年度に,日光杉並木保護財団によリ,今市市瀬川地区において,延長200m程度施工されることとなった。平成10年度事業の施工前後の状況は,写真−1〜3のとおリである。掘リ下げられた旧道敷が,事業施工後には,自然な杉並木街道に見えるようになった。
 
表−1 改良土壌の配合内訳
畑   土   75%
杉皮土壌改良材(クリプトモス)   10
牛糞堆肥   10
粒状木炭   5

写真−1 中空ブロック工法施工前
 

写真−2 中空ブロック工法施工中
 

写真−3 中空ブロック工法施工後
 

 注:原本はモノクロ印刷です。

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