(樹木医学会第12回大会研究発表要旨集 p.14,2007,樹木医学会)

                                 
  ヤマツツジのヒラシマハムグリハバチによる被害
 
野澤彰夫(栃木県林業センター)   
 
1.はじめに:栃木県那須町湯本の八幡地区で、ヤマツツジに寄生するハムグリハバチの被害が見られ、これまで報告されていない被害であるため、ここに報告する。
 なお、種の同定並びにご助言等をいただいた神戸大学内藤親彦名誉教授に感謝申しあげる。
2.被害の状況:2004年6月29日に那須町八幡のヤマツツジの葉に、潜葉性害虫の被害があることに気が付いた。その後、7月22日には葉の褐変部が拡大し、ツツジの成長にも影響が出るのではないかと心配されるような被害となっていた。原因害虫を調査するため被害葉を持ち帰り、葉中に残っていた幼虫の脱皮殻を検鏡したところ、微かな7対の腹脚が確認出来たため、ハムグリハバチの一種の被害と考えられた。
 一方、2005年7月5日に栃木県林業センター構内で北門に近いヤマツツジの株が同様の激しい被害を受けていることに気が付いた。被害葉中には葉肉部を食害している潜葉性の幼虫(写真−1)が観察された。
3.ハムグリハバチ成虫の確認:2005年7月8日に、林業センター場内の被害枝を、乾熱滅菌済みの黒ボク土に適度な水分を加えたものを入れたガラス瓶中に挿しておいたところ、間もなく多数の幼虫が褐変葉から落下して土中へ潜った。
 その後、適度の水分状態を保つように注意して管理したところ、2006年5月10日にはハムグリハバチの成虫が羽化し始めていた。多数の幼虫が土中へ潜り込んだはずであったが、羽化を確認できたのは13頭だけであった。
 前年、被害の激しかった林業センター場内の株を確認すると、5月24日には瓶中で羽化した成虫と同様の成虫(写真−2)が多数発生しており、葉上で交尾しているのが観察された。
 林業センター場内のヤマツツジ葉上から多数の成虫が得られたため、内藤親彦氏に同定を依頼したところ、ヒラシマハムグリハバチ(Profenusa hirashimai Togashi, 1981)と同定された。本種はこれまで寄主植物が不明とのことであった。
 また、那須町八幡のハムグリハバチも同一種かどうか同定していただいたところ、同一種であることが確認された。
4.ヒラシマハムグリハバチの生態:成虫の体長は雌で2.5mm、雄で2mm程度。幼虫は終齢で体長最大6.5mm程度。
 化性は一年一世代と思われる。ヤマツツジを食樹とするが、那須町八幡ではコメツツジ及びトウゴクミツバツツジにもハムグリハバチと思われる寄生が見られるため、同一種かどうかは今後調査する必要がある。


 
写真−1 潜葉ハムグリハバチ幼虫


 
写真−2 ヒラシマハムグリハバチ成虫

 注:原本はモノクロ印刷です。                                       

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